知財でAIビジネスに備える
Contents
AI関連発明の急増
ソフトバンク孫代表は「AIを制するものが未来を制する。起きるであろう未来をしっかり見据え、備えることが重要だ」と強調しています。
知財業務では、未来の事業を予測して、重要分野に知的財産権というビジネスツールを備えること求められます。
AI技術のなかでも、ニューラルネットワーク及び深層学習による機械学習が飛躍的な進歩を遂げました。特許出願も、機械学習に関するものが多いです。
AI関連発明の出願件数は第三次AIブームの影響で2014年以降急増しています。その主役はニューラルネットワークを含む機械学習技術です。中でも深層学習に関する発明が急増しており、2018年においては、AI関連発明の約半数は出願書類中で深層学習技術に言及しています。
※特許庁ホームページAI関連発明の出願状況調査より出典
AI開発企業でなくてもAI特許を取得できる!
以下、AI事業を支える効果的な特許をいかにして取得するかについて記載します。
2019年、特許庁は、「AI関連技術に関する特許審査事例概要」を発表し、そこには、AI関連発明について、発明該当性、明細書の記載、新規性・進歩性の要件について、具体的な例が記載されています。
これによれば、
AIエンジンの具体的なアルゴリズムに限定せずに、AIエンジンの部分を学習手段として上位概念化したアイデアのAI特許を取得できます。
すなわち、
AIエンジンの開発企業でなくても、自社事業にAI導入したシステムのアイデアを出せば、それについてAI特許を取得できます。
近年、特許庁審査では、進歩性を否定する場合には、その根拠となる文献を審査官が示さなければならないという方針があり、請求項の構成の組み立て方によっては、進歩性否定の根拠となる文献を審査官が示すことができず、強い特許が成立すると考えます。
具体的なAIシステムを開発していなくても、AI特許を取得できるのです。
これは、チャンスであるとともに、将来必要なAI技術の特許を他社に取得されてしまう可能性があるという意味ではリスクになります。
自社事業分野でAI導入を予測して出願
そのため、
自社で未だAI導入システムの開発をしていなくても、自社の事業分野でどのようなAIシステムが生まれるかを予測して、AI特許を取得することが重要です。
このアイデア出し、特許出願は早期にすることを強く勧めます。先行文献・先行特許の数は日に日に増えています。
AI発明のアイデア出しの方向性
(1)既存の学習モデル又は非学習モデルに新規な入力を追加したAI発明
※教師データを構成するデータ間の相関関係が技術常識でなく、
且つ、明細書でサポートさていることが必要
(2)学習モデルへの入力データの形式が新規なAI発明
※入力データの前処理、入力データのデータフォーマットが新規
(3)学習モデル内での処理(アルゴリズム)が新規(具体的)なAI発明
※パラメータの選定等
(4)複数学習モデルの新規な組み合わせのAI発明
(5)学習モデルへ入力する教師データ、又はその作成方法の発明
AI特許出願のポイント
(1)AI導入前に、アイデアを出して出願 ※AIベンダに発注する前に自社で単独出願する
(2)従来の技術・ビジネスモデルにAIを用いた場合を想定して再検討し、新規の技術やビジネスモデルを創出する
(3)新規発明について、従来の非AI発明とAI発明の双方の観点から検討(特許開発)する
(4)AI出願件数が増えているので、分野を絞って調査・ ウォッチングをする その結果をもとに対策を立てる
(5)AI発明発掘、AI特許情報を使った開発、AI関連強い特許を取得する効果的な方策を採用する